ツンドラ養生録 2023:《入院編》


― 救急搬送 ―

 血圧が高い。どれくらい高いかと言うと、病院測定では常に200超え。測ってくれる看護師さんもたじろぐ、ハイパー高血圧だ。
 ちょっと前までは、血圧なんてものは意識することもなく暮らしていた。ここ数年、健康診断の受診も怠っていた。「どっか悪いところがありゃあ、自分でわかるさ」と、タカを括っていたのだ。だがしかし、“老化”という自然の法則は、知らず知らずのうちにこの肉体を変えていた。そしてある日、ある出来事をきっかけに、ツンドラは、その現実を鼻先に突きつけられることになる。

 2023年1月11日、大寒間近の冬の夜に、それは起こった。
 風呂場に入り、ちょっと熱め(42℃)のシャワーを浴び始めたツンドラの左脇腹に、突然鋭い痛みが走った。その痛みは、瞬くうちにみぞおちと背中にまで拡がってゆく。まるで胸郭全体が痙攣を起こしているかのようだ。
 「ウギャーッ!」
これはただ事ではないと、まろび転げつ風呂場から出たツンドラは、死にもの狂いで先ほど脱ぎ捨てた衣服を身に着け、自室へ戻った。ベッドに身を投げ出ししばし悶絶していたが、痛みはいや増すばかり。再びまろび転げつ部屋から這い出すと、家人に119番通報をお願いした。

 ウンウン唸っているうちに、すぐに救急車が到着。3人の救急隊員さんが、ドヤドヤと上がり込んできた。ソファに横たわるツンドラを取り囲んで、現在の症状やコトに至った経緯について、アレコレと質問してくる。こちらは痛くて息も絶え絶えなんだが。
 血圧を測っていた隊員さんが、「高いな。200を超えてる」と呟くのが聴こえる。ツンドラが生まれて初めて、“血圧”というものを意識した瞬間であった。

 コロナ禍のゆえか、近隣の大学病院や公立の病院から受け入れを拒否された後、ツンドラは、市内にある中規模の総合病院に搬送されることになった。
 ♪ぽ〜ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜♪サイレンを軽快に鳴らしながら、救急車が走り出す。これまで家族の付き添いで乗ったことはあるが、自らが搬送されるのは初めての体験だ。激痛に身悶えしながらも、日本の救命インフラの頼もしさと有難さを、しみじみ感じるツンドラであった。

 病院に到着しても、中に入れてもらう前に、まずはPCR検査だ。こちらもツンドラには初体験。鼻の奥に遠慮会釈なくメンボーを突っ込まれ、心の中で「イテェ〜!」と叫ぶ。
 陰性が確認され処置室に運び込まれると、すぐに点滴が始められた。みぞおちの痛みが徐々に薄らいでゆく。舌下にニトロペンを入れてもらうと、更にラクになる。
 CTを撮ったり心電図を録ったり、アレコレの検査の後、当直のドクターが枕もとに来ておっしゃるには、検査結果を見ても、自分には病因をコレと特定することができない。消化器には問題がないし、心電図の方も、狭心症と言えるほどの乱れはない。痛みが消えているならこのまま家に帰っても大丈夫とは思うが、自分は消化器外科が専門なので、確信が持てない。念のために、循環器外科のある病院に当たってみましょう、云々。
 ということで、日頃から協力関係にあるらしい病院に電話をして下さった。親切な先生だ。先方からは受け入れO.K.のお返事。ツンドラは再び救急車に乗せられ、♪ぽ〜ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜ぴ〜ぽ〜♪を聴きながら、隣町のK心臓呼吸器病院へと運ばれていった。